我が家の海水水槽は、初めからずっと天然海水。
おうちが海沿いの小さな町にあって簡単に海水を汲みにいけるという事で、なんとはなしにずっと天然の海水を使い続けているのです。当初はそんな簡単な気分で始めたものの、実際に天然の海水を汲み続けていると色んな事に遭遇するものです。
天然の海水は、人工海水と比べてみると微生物が入っていたり、なんといっても汲みたての新鮮な海水が使える事にメリットがあります。水を入れ替えた後は、サンゴも心なしかポリプを今まで以上に開いてくれている感じがして、重労働の水換えにも精が出るというものです。
その天然海水が綺麗ならば、の話ですが・・・
海水で生き物を飼い始めた当初は、住んでいる町の漁港に海水を汲みにいっていました。
見た目は透き通っているし、なにせ家から近いのが便利で水汲みと言えばその漁港に通っていたのですが、ある日、水換え直後に異変が起こりました。
その頃はまだ水槽を立ち上げたばかりという事もあって、水槽の中にはイソスジエビやアゴハゼ、ヤドカリ、メジナといったタイドプールで簡単に採取できる生き物を飼っていました。
その中のメジナが、水を換えてから30分もしないうちにアップアップし始めているのです。
海水で生き物を飼い始めたばかりという事もあり、何が起きたのかさっぱり分かりません。どうしたらいいか分からないけれど、とりあえず水を換えたばかりの出来事だったので新しく入れた水に問題があるに違いありません。かといって、海水魚ショップの存在すら知らなかったその頃、水質測定キットなんて持っているわけがありません。
途方にくれながら、とりあえずこの水が悪いんだよなと思い、まだ少し残っていた汲んできたばかりの水を眺めていたのです。が、見ても単なる透明の水、別段汚れているわけではありません。前回汲んできた時と特に変わりがあるようにも思えません。そのとき、ふと何を思ったかは分かりませんが、その残っていた水をぺろっとなめてみたのです。
あれ・・・?
海水を汲んできたはずなのに、全然しょっぱくないのです。
あわてて汲んできた水の比重を計ってみると、なんとまぁびっくりの1.000近く。ようするに、ほとんど真水だったわけです。
実はその漁港のすぐ横に川が流れ込んでいて、引き潮の時間に海水を汲みにいくと、タイミングによっては単に川の水を汲んでいるのと変わらない状態だったのです。
こんな状態では遅かれ早かれ水槽の中の生き物達が皆苦しみ始めるのは目に見えています。大急ぎで車を飛ばし、地元の砂浜へ行って今度はちゃんとした海水を汲んできて、その時は一件落着となりました。
そのアクシデントを機に、換水する前にきちんと汲んできた水の水質測定をするようになりましたが、時には海水を汲みたくても汲めない時が出てくるのです。
我が家では、海水を汲むのは出来る限り潮のよく動く大潮の日あたりにしています。
が、そんな事を言ってられない場合も出てくるわけで。
その秋はとにかく台風の当たり年と言った感じで、ここ福岡には毎週のように台風が直撃していました。前回の大潮の時は台風がきていたので水が汲めず、もう一ヶ月近く換水できていない状態が続いていました。
とりあえずいつでもいいから水を汲みにいこうと思うものの、台風が通過した後の海は3〜4日は濁りがひいてくれません。そろそろ濁りがひき始めたかな?なんて思っていると連日連夜の残業になったり、はたまた雨が降っちゃって海水の比重が下がっちゃったり。そうこうしているうちにどんどん月日は経っていきます。
こころなしか、サンゴ達も元気がなさそうです。普段は2週間に一回水を換えてあげるのに、もう1ヶ月以上も水換えなしのまま。硝酸塩もだんだんとたまってきているようです。
気が気でない状態で数日間過ごしていると、ようやく海の水もきれいに澄んで、また前2〜3日に雨が降らないという好条件に恵まれました。やった、ようやく水が汲める、と喜びいさんでその頃水汲みで通っていた漁港へ車を飛ばしていったのです。
が、港に着いて岸壁から水を覗き込んでみると、恐ろしい事に水面が油膜で覆われていたのです。え〜、何これ・・・なんでこんなに油が浮いてるの・・・?と不思議に思い周りを見回してみると、一瞬にして原因が分かりました。
釣り人達の撒き餌の油だったんです。
アミエビなどにパン粉やら色んな粉を混ぜて使うので、それから油がしみでて岸壁近くの海面を覆っていたのです。
とりあえず水自体は澄んでいるので、釣り人のいない所で汲めばいいのですが、一回に換水する量が65リッター程、灯油のポリタンク3個分以上の水をエッチラオッチラ運ばないといけないのです。出来る事なら漁港の岸壁が一番楽で都合がいいのです。
それから車を飛ばし、漁港を順番にのぞいていきますが、どこも順調にアジの群れがよっているらしく、どこをのぞいても釣り師が並んでいます。結局1時間以上も近所を走り回ったあげく、地元の砂浜で水を汲む事になりました。
砂浜なのでキャリーも使えず、広い砂浜を重たいポリタンクを持って3往復。水換えが無事に済んだ時には安堵感と疲れでそのまま水槽を眺めながら寝てしまいました。
そんなこんなで意外に大変な天然海水での飼育。天然海水でのドタバタ話はまだまだありますが、それはまた後日ということで。
おそらく、なんでそこまでして天然海水を使うの?人工海水を使えばいいのに、という人もいるかもしれません。たしかに、最近の人工海水は質が上がっていて下手に汚い天然海水を使うよりもいい場合だってあります。けれど、天然海水には人工海水にはない楽しみもあるんです。
水を汲んでいる時には気付かなくても家に帰ってきて観察してみると、その天然海水の中に色んな生き物が入っていたりするんです。小さな小さなアミエビが一杯だったり、プランクトンがものすごい数入っていたり、何かの稚魚が混ざっていたり、はたまたクラゲが入っていたり。それらを観察するのもまた楽しみの一つなんです。
けれど・・・緊急の時のために一応100リッター分くらいは人工海水の素を家においておいた方がいいかも。
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